2013年6月号 民法(債権関係、個人保証)改正が金融機関の融資慣行を変える
法制審議会が進める民法(債権関係)改正に関する中間試案において、中小企業が融資
を受ける際の個人保証の扱いがクローズアップされています。法制審議会として保証人の
保護を強化するためにルール改正に動いており、民法(債権関係)部会改正では、金融機
関が中小企業に融資する際に求める個人保証は経営者に限ることを提示するも、中間試案
においては「引き続き検討していく」ことになっています。
金融機関側として個人保証は、経営者の規律付けによるガバナンスの強化など一定の有
用性をもったルールであり、中小企業の資金調達の円滑化、調達コストの低減等に寄与し
ており、個人保証が貸し手の融資判断や融資金額、金利の設定等にも密接に関係している
のが実態であります。これから一層、融資先の経営者の人となりや考え方や経営姿勢、経
営方針、事業価値、従業員の状況などを掌握して融資することが求められます。
現在、個人保証に関して注視していることが2つあります。「金融庁の監督指針」と「中
間試案の説明義務、情報提供義務」であります。
個人保証の制限に関して、金融庁の「主要行等向けの総合的な監督指針」は、「Ⅲー9 経
営者以外の第三者の個人保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立等」におい
て、「個人連帯保証契約については、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを
原則とする方針を定めているか。(中略)経営者以外の第三者が、経営に実質的に関与して
いないのもかかわらず、例外的に個人連帯保証契約を締結する場合には、当該契約は契約
者本人による自発的な意思に基づく申し出によるものであって、金融機関から要求された
ものでないことが確保されているか」などと示されております。(同 「中小・地域金融機関
向けの総合的な監督指針」のⅡー9 も同様)
説明義務、情報提供義務に関しては、中間試案における改正検討事項では、保証契約締
結時の説明、締結後の情報提供を怠った場合に保証契約の取消や保証債務の限定に結びつ
くことが検討されていることから、仮に中間試案のとおりに民法が改正された場合には、
金融機関としては、少なくとも同法に列挙された事由は、確実に保証人に説明、情報提供
する必要がでてくることです。
中小企業側も 「企業と経営者等との関係の明確な区分・分離をすること」 「財務基盤を強
化すること」 「財務状況の正確な把握と・適時適切な情報開示による経営の透明性確保するこ
と」 等の課題をクリアーしていかねばなりません。民法改正が、「社会・経済の変化への対
応」を図り、「国民一般に分かりやすい」ものとするには、債権者側と債務者側これから熱
い議論が展開されます。
中小企業として、経営基盤や財務基盤が概して強固でないため、中小企業自らが経営の
透明性を高め、適時適切に情報開示を行い、金融機関に経営状況を相談しながらアドバイ
スを受けることで、自らの経営課題に気づき解決していくといった取り組みをしていくこ
とが重要であります。