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2014年8月号 地域金融機関のビジネスモデルの持続性を検証

地域金融機関のビジネスモデルの持続性を検証

 

 

金融庁は金融検査の年次報告書を初めてまとめた。地方銀行の中小企業向け融資は2割強が収支赤字となり、「事業モデルは成立しなくなる可能性がある」と指摘した。2025年には全国都道府県で融資残高が縮小するとも分析し、業界再編を迫る。(日本経済新聞 2014年7月4日朝刊)と報道している。

 

背景として、地方の人口が急減しており、日本創生会議は、2040年に現在1800ある市区町村のうち、半分の896自治体が消滅の危機に陥る可能性があると発表している。また、国土交通省は、2050年には1k㎡ごとに分けた全国18万地点のうち、約6割で人口が半分以下となると公表している。

さらに深刻化する少子・高齢化社会を背景に、都市部では地方の若年層の都市部への就学・就職や高齢者の駅近マンション購入といった動きに伴う人口流入、一方地方では若年層の流出から高齢者比率が高まる地域の増加が予想される。

 

にもかかわらず、いま日本には105行の地方銀行がひしめいており、地域の経済規模に比べて過度に多い状態であり、融資先の奪い合いが起き、過当競争に陥っている。いわゆるオーバーバンキング(銀行過剰)問題がある。

 

金融庁は、「中小・地域金融機関向け監督方針」において、地域金融機関に求められる役割や監督当局の取組姿勢等を公表して、「人口動態から推計した将来の地元市場規模」や「収益性」により地域金融機関のビジネスモデルの持続性を検証している。公表されている監督方針は、下記のとおりである。

1. 地域金融機関に求められる役割

適切なリスク管理の下、目利き能力やコンサルティング機能を高め、成長分野などへの新規融資を含む積極的な資金供給を行うとともに、中小企業の経営改善・体質強化の支援を本格化していくことが期待される。

各金融機関においては、自らが果たすべき役割を十分認識するとともに、急激な社会・経済の変化や国際規制の変更等にも対応するため、経営陣が責任ある経営判断を迅速に行う重要性が増している。同時に、各種のリスクを的確に把握した上で、5~10年後を見据えた中長期の経営戦略を検討することが重要である。

2. 監督当局の取組姿勢等

監督当局においても、地域金融機関が経営陣による適切なリーダーシップの下、ガバナンスやリスク管理態勢等の整備を行うとともに、自行のビジネスモデルの持続可能性などに関しても適切な検証を行い、資本政策も含めた短期及び中長期の経営戦略を描くことができているかについて確認し、必要に応じて経営陣と議論を行うとともに、更なる検討を促していく。

 

地域金融機関として、生き残りには事業領域の拡大や外部との連携強化、インターネット専業銀行の設立を検討、業務提携や経営統合も重要な選択肢、県外企業との商談や海外展開支援、システム連合を核にした地銀の広域連携等を模索しているが、5~10後を見据えたどのような短期及び中長期の経営戦略を描くのか真価が問われている。

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