2015年 8月号 東芝、プライドが企業統治を形骸化させた
東芝、プライドが企業統治を形骸化させた
東芝の不適切会計は、日本のどこの企業でも起こりうる可能性を孕んでいる。
名門企業と言えども、終身雇用で閉鎖・均質化された集団が、厳しい国際競争と事業再編の波にもまれ思考停止の状態になっていないだろうか。自分たちの保身や組織防衛にために企業を私物化していないだろうか。「上司に逆らえぬ企業風土」役員から社員に至るまで「できない」とは言わないというのは、何も東芝の社員に限ったことではない。
7月21日公表された「第三者委員会調査報告書」の概要として、
(1)全容:不適切会計は約7年間で1562億円、経営トップらの関与を含めた組織的な関与、インフラやテレビ、パソコンなど主要分野ほぼすべてで行われる、監査法人への事実の隠蔽など巧妙な手口がある。
(2)原因:当期利益至上主義と目標必達のプレッシャー、経営トップが現場を追い込む、上司に逆らえない企業風土、取締役会や監査委員会の監督が機能せず
(3)防止策:経営トップらの意識改革、関与者の責任の明確化、過大な収益目標や損益改善要求の廃止、強力な内部監査部門の新設 が述べられている。
8月31日までに13年度までの過年度決算を訂正し、14年度決算を発表、有価証券報告書を提出しなければならないが、Bloomberg.co.jpは、「東芝:1兆円を資本市場で調達、経営トップ関与の水増し会計で」 東芝は2009年5月に3330億円の公募増資を実施し、国内外の機関投資家や個人に新株式の発行や株式の売り出しなどエクィティファイナンスを行ったほか、09年5月から13年12月の間に計6400億円の普通社債や劣後債などの有価証券を発行したと報道。証券取引等監視員会、金融庁、東京証券取引所等の動向を注視したい。
東芝は、再生に向けた重い課題を解決していかねばならない。指名委員会が、どのように公正なプロセスで次期社長を任命できるかが極めて重要である。不適切な会計は不採算の事業部門を中心に広がっており、事業構造の抜本的な見直しが避けられない。人事、リストラ、企業風土改革等これからが本番である。東芝問題を他山の石として、社長は「上場の利益増減3割ルール」を忘れない、CEO(=最高経営責任者)の暴走を止めるCFO(=最高財務責任者)との関係、企業統治は形よりも運用する人が重要であり器を作っても魂を入れることが大事、トップの恣意的な経営に陥らないように社外の目を生かすことである。
最後は、企業統治の体制はトップが積極活用する気がないと機能しないと思料する。
コーポレートガバナンスに真摯に向き合い取組むことを投資家は期待している。