金融NEWS・コラム

NEWS / COLUMN

2017年6月号 トヨタ自動車の意志が表れた決算

 

トヨタ自動車は、未来のために今を変える強い覚悟を持ち、リスクを取って自ら道を切り拓いていこうとする会社に変わってきている。『「未来」を創造する技術力と志を持った企業を育てていくことが必要であり、自分達の等身大の姿を真正面から見据え、徹底的に競争力を磨いていく年ということに尽きる。』と。

まさにトヨタ自動車の意志が表れた決算発表であった。

 

トヨタの純利益は、1社で上場製造業の1割を占め、業績動向が日本経済に与える影響は大きい。2018年3月期の連結業績予想は、純利益は前期比18%減の1兆5000億円となり、2年連続で減収減益となる見通しである。北米市場など先進国の減速で世界の販売台数が増えないうえ、為替レートを円高に想定したのが響く。トヨタといえども、いいものを作れば売れるということでなく、お客が欲しいものを作らないと売れない。

 

トヨタ自動車の豊田章男社長は、決算会見で「将来、自動車産業は全く違った世界になるかもしれない」と語り、人工知能(AI)などの分野で「10年、20年後を見据えた種まきを続けたい」と語った。4年連続で1兆円を超える研究開発投資と設備投資をつぎ込む姿勢に未来への危機感が色濃く映る。年間1000万台を売る巨大企業は競争力を維持するために正念場を迎えている。

 

トヨタ自動車の決算発表と同時期、興味ある記事に目が留まった。日本の稼ぐ構図の特徴として、大きく変わってきており海外とのモノやサービスの取引状況を示す経常収支は、企業が海外の株式や債券などに投資して稼ぐ収益(所得収支)が大幅に増加している。日本の稼ぐ構図は、日本企業の投資マネーはアジア新興国など成長期待の高い地域に流れる。企業が海外での再投資を増やすと、経常収支が拡大しても国内の雇用や税収の増加につながらない。2016年度の経常黒字額は、20兆1990億円。顕著なのは企業が持つ海外の株式や債券の配当から得る所得収支の黒字が、経常黒字の9割近くを占める。人口減が進む日本の潜在成長率は低迷している

 

将来的に日本企業は、政府が未来投資会議で示した成長戦略とともに、日本国内の雇用や税収増加させていくのか、海外で本格的にもうけていくのか今後動向を注視していきたい。

お問い合わせ

TOP