2017年8月号 睡眠障害の予防に向けて
健康寿命の延伸の実現に向け、健康経営は喫緊の課題であることは論を待たない。健康 経営即ち従業員の健康の維持・増進に向けた取組みが従業員の満足度や生産性、業績など経営にプラス効果があるとの認識が高い。
健康経営に欠かせない従業員の睡眠の問題は、栄養や運動と並んで健康を支える重要な要素である。従って、睡眠は健康の維持増進に関わるライフスタイルの改善に必須であるばかりでなく、労働環境の改善、疾病予防や事故防止にとっても重要である。従業員との会話において「睡眠負債(Sleep Debt)」で悩んでいる人が多いことも判明した。眠りによる危機的な状況を未然に防ぐためには、普段から睡眠負債をなるべく少なくしておくように努力することです。
2002年に、日本学術会議から「睡眠学」という新しい学問体系が提唱されている。睡眠に関する正しい知識を習得し、健康で快適な生活を維持していくために「睡眠学」の切口からさまざまな調査、研究、治療・予防方法の開発、国民への啓発活動が始められています。
「睡眠障害対処12の指針」をご紹介することで、健康で文化的な生活をおくる従業員が増え、結果として健康経営につながればありがたい。
睡眠障害対処12の指針
(出典 内山真(編):睡眠障害の対応と治療のガイドライン)
指針1:睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
・睡眠の長い人、短い人、季節でも変化、8時間にこだわらない
・歳をとると必要な睡眠時間は短くなる
指針2:刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法
・就寝前4時間のカフェイン摂取、就寝前1時間の喫煙はさける
・軽い読書、音楽、ぬるめの入浴、香り、筋弛緩トレーニング
指針3:眠くなってから床に就く、就床時刻にこだわりすぎない
・眠ろうとする意気込みが頭をさえさせ、寝つきを悪くする
指針4:同じ時刻に毎日起床
・早寝早起きでなく、早起きが早寝に通じる
・日曜に遅くまで床で過ごすと、月曜の朝がつらくなる
指針5:光の利用でよい睡眠
・目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計をスイッチオン
・夜は明るすぎない照明を
指針6:規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣
・朝食は心と体の目覚めに重要、夜食はごく軽く
・運動習慣は熟睡を促進
指針7:昼寝をするなら、15時前の20~30分
・長い昼寝はかえってぼんやりのもと
・夕方以降の昼寝は夜の睡眠に悪影響
指針8:眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに
・寝床で長く過ごしすぎると熟睡感が減る
指針9:睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意
・背景に睡眠の病気、専門治療が必要
指針10:十分眠っても日中の眠気が強い時は専門医に
・長時間眠っても日中の眠気で仕事・学業に支障がある場合は専門医に相談
・車の運転に注意
指針11:睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと
・睡眠薬代わりの寝酒は、深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因となる
指針12:睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
・一定時刻に服用し就床
・アルコールとの併用をしない