2019年2月号 政府は、信任に値するか?
「毎月勤労統計調査」は、1921年開始の日銀労働統計に遡り、伝統のある政府統計である。被用者数、労働時間、支払賃金額などを月次で集計しており、景気動向の判断に欠かせない。
このように重要な基幹統計と位置づけられているにもかかわらず、厚生労働省の「毎月勤労統計調査」で不適切な調査が長年続いていたことが発覚し、各省庁が全56基幹統計の点検を進めていたところ、4割にあたる22基幹統計で作成に誤りがあったと総務省は1月24日発表した。不適切調査の実態と動機の徹底解明が求められる。
不適切事案のあった22統計
国土交通省 | 建設工事統計、建築着工統計、鉄道車両等生産動態統計、自動車輸送統計、 | |
港湾統計、造船造機統計、法人土地・建物基本統計 | ||
総務省 | 住宅・土地統計、経済構造統計、全国消費実態統計 | |
財務省 | 法人企業統計、 | |
文部科学省 | 学校教員統計、社会教育統計 | |
厚生労働省 | 毎月勤労統計、薬事工業生産動態統計、医療施設統計、患者統計 | |
経済産業省 | 経済産業省企業活動基本統計、商業動態統計、ガス事業生産動態統計 | |
農林水産省 | 牛乳乳製品統計、農業経営統計 |
また、不適切調査問題は、第三者委員会の特別監査委員会が検証結果を発表したものの、関係者聴取に厚生労働省幹部が一部同席するなど「実態は内部調査」と中立性に疑念が持たれている。企業不祥事が発生し、第三者委員会を立ち上げたもののお手盛りの調査報告書を発表する企業と何ら変わらない。全くガバナンスが働いていないと言わざるを得ません。
政府統計の質を高めるには、専門職の育成やキャリア支援が欠かせない。政府全体に統計の重要性を理解してない表れであり、統計関連予算や人員を減らし続けてきたことに問題がある。再発防止策として、基幹統計を現業官庁から切り離し、英国のように統計調査を担当する国家統計局(ONS)のような行政府に属さない独立機関へ集約することも一つの選択肢である。
ここ数年、財務省の決裁文書改ざん、防衛省・自衛隊での南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報の隠蔽なども過去に発生しており、実効性のある再発防止策を実行することしか政府に対する信頼回復の道はない。