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2019年6月号  令和時代、少子化への対応について

国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2050年すぎに日本の人口は1億人を下回ると予想する。人口維持の分岐点は出生率2.07であり、そもそも出生率が人口を維持できる水準に回復することは容易でない。いま少子化対策に取り組んでも効果が出るのは先になると言われている。

 

日本において出生率が低いのは、少子化による未婚率の上昇が主因だといわれる。30代前半女性の未婚率は1990年13.9%だったのに2015年34.6%に上る。生涯未婚率も年々上昇し、2015年に男性23.4%、女性14.1%に達している。その原因として、人口危機を正視できない日本人の国民性と政治の情けなさがあげられる。

 

いま非正規雇用や正社員であっても収入が低かったりしたら男性は、結婚に踏み切れない。雇用劣化が未婚化を促し少子化に拍車がかかっている。また保育サービスの充実や子育て手当の拡充、仕事と子育ての両立支援などで国が有効な対策を打ってこなかったことに因る。「男は仕事、女は家庭」といった性別役割分担意識が強いこともある。

 

子供を産むか否かの決定権(リプロダクティブ・ライツ)は個人が持つ重要な権利であるにも関わらず、女性のライフスタイルが平成に多様化してきた一方、女性は子供を産んで当たり前といった固定観念も根強く残る。女性が生きづらさを感じる社会環境は女性を出産からますます遠ざけている。それゆえ、日本は低迷から抜け出せない。低出産率が常態化するほど回復には多くのコストと労力が必要になるため、少子化の窮地から抜け出せなくなってしまう「少子化の罠」の状況になることを理解していない。

 

早晩人口問題は日本の姿、国土のかたちを変える。まずは、国土利用の希薄化である。国土交通省の推計によると2050年には居住地域の2割で生活する人がいなくなり、6割以上で人口が半分以下になる。鉄道やバスが使えない公共交通機関空白地域が増えることが想定される。

 

いま人口減に適合する社会に向けて、コンパクトな街に再編する必要があり、人口知能(AI)やドローン、自動運転などの技術を積極的に取り入れる必要がある。無人店舗でのデジタル決済やドローンを使った宅配、遠隔医療などが当たり前になってくる。加えて、外国人と共生する地域づくりも大事である。喫緊の課題として日本は、人口動向を直視した大胆な改革をしなければこの国の将来はない。

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