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2020年10月号 コロナ禍における脱炭素化と経済成長

いまコロナ禍において、通勤や出張の減少、遠方との会議のオンライン化によるガソリンやジェット燃料の使用量の減少がエネルギー需要に変化が出てきています。景気刺激と環境対策を両立させる「グリーン・リカバリー」させることができる千載一隅のチャンス到来です。我が国の現行の「エネルギー基本計画」は、2030年度の電源構成について原子力を20~23%、再生可能エネルギーを22~24%、残り56%を石炭や石油など化石燃料でまかなうとしています。地球温暖化問題に対して、すでに周回遅れにある日本があります。

 

一方、欧州連合(EU)の欧州委員会は、すでに域内の温暖化ガスの排出を2050年に実質ゼロにする目標「欧州グリーンディール計画」の実現に向けて、今後10年間官民で少なくとも1兆ユーロ(約122兆円)規模を投じる投資計画を公表しています。石炭など化石燃料に依存する国々の再生可能エネルギーへの転換などを支援するのが主な目的であります。欧州委員会は、「脱化石燃料」に向けた一歩としたい考えで、同分野での技術革新などを通じ、新たな成長戦略とする考えであります。また、国際エネルギー機関(IEA)によれば、世界の発電量に占める太陽光や風力など再生エネルギー比率は40年に44%となり、石炭や天然ガスを上回る最大の電源になります。日本もこの潮流から逃れられない。広大な海洋をいかした洋上風力を増やす、導入拡大のネックとなる送電線利用のルールを見直す、発電した場所で電気を使う分散型システムの導入を促すなどあらゆる政策を動員して再生エナルギーを主力電源にしていかなければならない状況にあります。各国は、2021年11月の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)に向けて、一段の対策強化が求められています。そのためには最大の温暖化ガス排出源であるエネルギー分野の対応が重要であります。

 

いま日本は、脱炭素化方針をいち早く打ち出し、脱炭素化と経済成長を同時に成し遂げたスウェーデンを見習うべきであります。2018年1月には、「気候法」を発効し、脱炭素化の方針を鮮明にしました。産業構造を転換することで、CO2排出を削減しつつも、経済成長を図ることは可能であります。現に、環境に取り組むことで成長した実績を上げることができた国があるのです。政府の「エネルギー基本計画」や「地球温暖化対策計画」の見直しに経済産業省や環境省といった省庁の垣根を越えて着手するべきであります。エネルギーを取り巻く環境が急速に変化しています。地球温暖化問題への関心の高まりを背景に、太陽光や風力発電、水素エネルギーの利用拡大など脱関連の投資を経済の回復と雇用創出につながなければなりません。新型コロナウィルスで落ち込んだ経済の立て直しと同時に、脱炭素社会への転換を加速していくことが喫緊の課題ではないでしょうか。

 

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