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2022年12月号 人口減、岐路の地方鉄道

1872年10月14日に新橋~横浜に鉄道が開業してから150年を迎えた。しかしながら、新型コロナウィルス禍による利用の減少に加え、人口減少、右肩上がりの時代のままの制度や政策が限界に来ている。日本の場合公共交通は、施設管理も含め、ビジネスとして運営することが原則であるものの、今日主要先進国でそうした国はない。欧州の国々では鉄道やバスなど公共交通を社会に不可欠な公的サービスと位置づけ、手厚い公的支援をしている状況にある。

 

いま利用者の減少が列車本数削減などのサービス低下をもたらし、さらなる利用者の減少と平均費用の増加により、収支を悪化させるという負の循環が生じている。いまこそ営業収支でなく社会的便益と費用に基づく評価を基本とするべきであろう。社会的便益と費用には、営業収支とともに、利用者便益や環境改善、道路交通事故の減少のような外部経済効果も含まれる。

 

さまざまな有識者が、建設的な提案や意見を述べている。斎藤峻彦氏は、鉄道を経済学者・宇沢弘文が定義した「社会的共通資本」とみなし、「不採算公共輸送の存続に交通事業者の内部補助能力を活用しようという手法は、現代の先進国型交通政策モデルから大きく外れる」としている。「商業輸送の限界を見極めること」「縦割り行政の壁を超えること」「交通政策の地方分権を進めること」「外部性の議論を政策に組み込むこと」が「検討課題」として指摘している。

 

さらに加藤博和・名古屋大学教授の提案として、「ローカル鉄道を巡る関係者の今後のあるべき姿」として自治体・地域が必要なモビリティ確保のために主体的に取り組むことが大事であり、鉄道事業者は地域に合った運行実現に努力すべきであり、国はやる気のある地域を積極的支援していくことが求められている。文世一・京都大学教授と伊藤亮・東北大学准教授は、共同研究において複数自治体が単一の施設を共同で運営するためのメカニズムを提案している。鉄道路線は複数の自治体にまたがることが多く、県境をまたぐ場合もある。複数の自治体が鉄道運営に対する負担をどのように分担すべきであるのか。第一に、共同運営に参加する自治体は、協議により運賃政策を決定する。第二に、各自治体は事業者に対し施設の運営資金を拠出する。その際、拠出額は自地域住民が得る便益に応じて決定する。第三に、運賃収入は拠出割合に応じて各自治体に分配する。第四に、運賃収入と運営費用の差額がマイナス(赤字)になる場合には、赤字がゼロになるよう各自治体は自地域の利用者数に応じた金額を運営者に支払う。

 

国、自治体、地域住民は、鉄道会社任せでなく国内の交通機関として鉄道をどう位置付けていくのか、問われている時代になってきていると認識するべきではないだろうか。

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