2022年4月号 Society5.0の実現に向けた「アジャイル・ガバナンス」
現代社会は、少子高齢化、都市への人口集中、経済成長の鈍化、所得格差の拡大、急速な気候変動、環境破壊等様々な課題を抱えている。こうした課題を克服するためには、AI、ビッグデータ、IoT,5Gなどのサイバー空間とフィジカル空間とを融合させるシステム(サイバー・フィジカルシステム)がもたらすイノベーションを、社会のあらゆる場面で起こしていく必要がある。このような社会を”Society5.0”と名付けている。
Society4.0以前の社会を前提とした法規制、市場メカニズム、個人・コミュニティの参加に関するガバナンスシステムは、Society5.0の時代において様々な限界に直面する。こうした限界を乗り越え、イノベーティブな社会を実現するためには、既存の法律、市場、民主的なシステムのあり方を見直すべきである。そうした新たなガバナンスモデルを、アジャイル・ガバナンス・モデルと呼ぶ。
アジャイル・ガバナンス・モデルには、2つの特徴があります。
一つ目は、「マルチステークホルダー・アプローチ」です。社会の変化の加速と複雑化に伴う情報の非対称性の増大や、価値観の多様化を考えると、企業、政府、個人・コミュニティといった様々なステークホルダーが、それぞれの持つ情報と価値観の下に自主的なガバナンスを行いつつ、透明性と対話を通じて他のステークホルダーとの間での信頼を醸成する、協働的なガバナンスを行っていくことが重要である。
二つ目は、「アジャイル・ガバナンス・サイクル」です。PDCAを内包しつつも、その前提となる環境分析やゴール設定を常に見直し続けるとともに、外部に対する透明性やアカウンタビリティを確保するモデルである。
アジャイル・ガバナンスは、「社会においてゴールを達成するための仕組み作りおよびその運用」と捉えている。絶えず変化する社会において多様化・複雑化するゴールを追求するにあたり、既存のガバナンスの考え方では対応が著しく困難になっているのではないか、と問題提起している。