2023年10月号 隠岐ジオパークに魅せられて
先月、「付加価値経営の教科書」を出版させていただきました。その中に、「グローバル化が進展すればするほど、人類の生存、人間社会の存続といった根源的な問題が重視されるようになってきます。最終的には環境や人権といった普遍的で人間的な価値観に行き着くのではないでしょうか。」という文章を記述しましたが、念頭には「隠岐ジオパーク」のことがありました。ジオパークは、地質学的重要性を有するサイトや景観が、保護・教育・持続可能な開発が一体となった概念によって管理された、単一の統合された地理的領域です。
島根県に属する約180の島と4つの有人島からなる隠岐諸島は、自然環境・人の営みが世界的に貴重とされ2022年「ユネスコ世界ジオパーク」に再認定されました。「地球の記憶が息づく島」です。北海道で見られる植物と、沖縄で見られる植物が同じ場所で生きていたり大陸性の植物、高山性の植物、さらには氷河期の植物までもが共存していたり、4つの有人島には100社を超える神社があるほどたくさんの神様が住んでいたり、隠岐ユネスコ世界ジオパークの自然と文化は世界的にも貴重な存在とされています。
隠岐ジオパークでは、単に貴重な地質資源が見られるだけではなく、何億年も続いている隠岐が形成された「大地の成り立ち」、その大地の上に育まれた「独自の生態系」、今日まで受け継がれてきた「人の営み」をひとつの物語として知ることができます。
日本海の離島だからこそ見られる独自の特徴と、刻まれた地球史の記録を大地の遺産として見ることができます。この大地の遺産からは、大地の成り立ちが地域の景観、地理、生物、文化、歴史に与えてきたつながり(大地の物語)を知ることができます。隠岐の大地の物語は、3つの要素「大地の成り立ち」「独自の生態系」「人の営み」で構成されています。
・火山が生んだ2つの丸い大地
隠岐諸島の地形は火山に由来しており、多くは溶岩からなります。
・日本海の荒波が生んだ絶景
景観を特徴付ける奇岩は、岩脈や断層、地層などの地質と、冬の北西季節風と荒波によって作られます。
・混じり合う植生
隠岐は全体がひとつの気候帯に属しているにも関わらず、異なる気候に生育する生物が共存しており、その種類は1,800種を越えるとするデータもあります。
・花の島
隠岐諸島の植生には北と南、標高の高い土地と低い土地の植物が混じり、そこに大陸由来の種や固有種まで加わり、日本国内でも有数の植物の種が多い島です。
・遠近2つの漁場に囲まれた島
日本海の中でも隠岐の周辺には2段の平坦面の広い大陸棚が広がり、通年のイカ漁や冬のズワイガニ漁の漁場となっています。
・貴人が流された資源豊かな遠流の島
隠岐には中世に後鳥羽天皇、後醍醐天皇が流された遠流の地として日本史の教科書にも登場しています。
・黒曜石がつなぐ古代出雲と先史の隠岐
隠岐には、石器の材料として知られる岩石、黒曜石の産地として始まる長い歴史があります。
・島の暮らしの工夫
隠岐の風土と強く関わる産業として、牛や馬の放牧と麦、豆、雑穀の作付けを組み合わせた牧畑農業を1970年頃まで行われていました。
(資料:OKI ISLANDS UNESCO GLOBAL GEOPARK)
隠岐島は、若者がチャレンジしたくなるような魅力ある仕事・暮らしづくりを目指した官民連携型の「大人の島留学」を取り組むことにより、次世代還流人材の創出・育成を図っています。明るく元気な姿で働く若者を見ていると、こちらまで元気になります。ここは、地球の未来を考えることができる場所と空間がありますので、一度訪れることをお勧めいたします。