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2024年10月号 インド研修旅行を終えて

米中対立やロシアのウクライナ侵攻、チャイナリスクといった地政学要因によるビジネスリスクの顕在化を経験し、グローバル企業は販売先や製造拠点の多角化を模索する動きを活発化させています。そのなかでインドは、GDP総額で2025年に日本、2027年にドイツを抜いて、米中に次ぐ世界第3の経済大国になると予想されています。それ故、インドの理解を深めるべく、8月27日から9月4日まで研修旅行に行って来ました。

いまモディ政権はGDPに占める製造業の比率引き上げを目指し、製造業振興政策「Make in India」を推進しています。製造業強化で、雇用に創出や貿易収支の改善に加え、中国などからの輸入に依存する重要製品の国内生産強化を通じた経済安全保障の確保や、グローバルサプライチェーンにおける生産・輸出拠点としてのインドの地位向上などを目指しています。
「Make in India」の中核を担うのは、「生産連動型優遇策(PLI)」です。これは携帯電話、医薬品、自動車・同部品、太陽光発電モジュール、先端化学電池など14品目を対象に補助金を付与するもので、重要品目の国産化を狙っています。そればかりか、いわゆる「グローバルサウス」(新興国・途上国の総称)の重要性の高まりも重要な要素となります。アジア、中東、アフリカに事業を拡大する上でインドを世界の輸出拠点として考えているグローバル企業グループは多数います。

しかしながらも課題山積した国でもあります。脆弱なインフラ(不安定な電力供給、非効率な物流など)、複雑な労働法制や税制、難しい土地収用、未成熟な裾野産業などがビジネスの阻害要因として指摘されます。加えて、インド固有の事情として、現地の雇用環境や消費者の車の嗜好、所得水準の現実など現地にいなければ、なかなか実態がつかめない情報もありそう簡単にいきません。

この研修で印象に残ったことは、
① トヨタ自動車のリ-ン生産方式採用して5Sやカイゼンを定着させるレベルでなく徹底させるレベルまで高め、驚いたことにそのデータを基にして体系化・モデル化している企業が多数ありました。 
② デリーやチエンナイに日本企業の8割進出、しかし世界企業の進出は、マハーラーシュトラ州やグジャラート州へ進出するのが通常であります。従来の日本的発想にとらわれることなく、ITエンジニアリングの人材が豊富な大学院卒業レベルを採用するなどDXを絡めた進出を検討することも必要です。
③ 日本企業は何をインドに持っていき、持っていかないのかを業界ごと、企業ごとにしっかり考えるべきである。自分たちの強みに敏感になり、「秘伝のたれ」を守る時代になってきています。
日本企業として、相当の覚悟をして進出しなければ成功はおぼつかないと思います。

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