2024年4月号 企業不祥事の再発防止策は、外国人の視点が必要ではないか。
日本のものづくりの原点のような名門会社である株式会社豊田自動織機は、豊田佐吉発明の「自動織機」を製造・販売するために愛知県碧海群刈谷町(現刈谷市)に1926年(大正15年)に設立された。その名門会社において、品質不正問題が発生した。特別調査員会は、「調査報告書」において下記メッセ-ジをおくっている。
豊田自動織機の経営陣には、今一度組織風土上の課題にまで踏み込んだ議論や検討を行い、従業員に対して会社の目指す方向について明確なメッセージを発信していただきたいと考えている。また、豊田自動織機の従業員においては、自らの仕事に誇りを持ち、その役割を全うするとの強い思いをもっていただきたい。従業員の皆さんには、誇りを胸に自らの職責を全うするよう力を尽くしていただきたいと考えている。
「企業不祥事と従業員エンゲージメントの関係」の調査レポートが、興味深い記事を掲載している。調査レポート(引用文献: Motivation Engineering Report 2021.03.24 )において、
会社に従順すぎるような社員が多いほど、不祥事が発生するリスクが高くなると言える。従業員一人ひとりが会社の一員であることを自覚し、「自立した個」として顧客や社会と接続しながら、仕事に向き合っているかどうかが、不祥事の発生を左右する重要なポイントとなるのであろう。さらには、変化が激しい時代だからこそ、「適応するための拠り所となる判断基準を持つことが重要」とも言えそうだ。企業がどんな歩みを大切にしてきたのか、企業としての判断基準は何か。歴史や経緯の理解などを通じて、自社の理念やアイデンティティについて改めて「腹落ち」するプロセスを重視することも、重要な要素だと言えるのではないだろうか。
そして、本質的な解決策は、従業員一人ひとりの意識改革にある。多くの企業はコンプライアンス研修や、ルール整備を実施しているであろうが、それらだけでは本質的な解決にはならない。肝心なことは、従業員を手厚く保護することでななく、社内外の様々な人材や情報と触れる機会を設けたり、会社の歴史を共有したりして、目の前のことや自分しか見えてない従業員の視界を、時間的にも空間的にも拡げることだ。制度待遇や研修制度の整備などを行う前提として、従業員に対する理念の浸透に加えて、組織文化の共有、風土の改善に日常的に取り組むことが重要だと言えるのではないだろうか。
企業不正「脱却」の処方箋 ダン・アリエリ-(デューク大学教授)によれば、不正は、いわゆる「滑りやすい坂道」論で説明できる。一度悪い行動をする人はそれを正当化し、次のステップに進むハードルが低くなる。不正を容認するような社内文化を放置したまま、少しだけ改善しても、根本的には何も変わらない。社内の文化を変えるためには、徐々にではなく劇的な変化が必要である。人々が不正な行為に誘惑される前に、節目ごとに正直に行動するよう誓約させることが重要である。正直であることを意識させることで、重要な判断局面に来た時に不正する意識を抑制することは可能である。
企業不祥事が多発している日本企業においては、外国人からの視点よる再発防止策が必要なのかもしれない。